「トランス女性」とは誰なのか?Xジェンダー(ノンバイナリー)の当事者より。


ラニア

はじめまして。Xジェンダー(ノンバイナリー)当事者のラニアと申します。
普段はツイッターでXジェンダー(ノンバイナリー)に関するツイートを投稿しています。

Xジェンダーは現状の一般的な定義としては、両性、中性、無性、不定性等の男女いずれかでないジェンダーアイデンティティーを包括する概念であり
また、ジェンダーアイデンティティーは性自認や性同一性という言葉に訳されます。
類似した概念にノンバイナリーがあります。

トランスジェンダーの解釈によっては、ノンバイナリーはトランスジェンダーに含まれることがあります。
個人的には分けた方がいいと思っていますけれどね。

僕には自身の生まれ持った体への強い違和感があったため、その違和感による苦痛を緩和する目的で男女混合でのホルモン治療や乳腺と子宮卵巣の摘出手術を受けています。
いわば僕はトランスセクシャルの男女いずれかでない版とでも言うような立場にあり、なおかつXジェンダー(ノンバイナリー)のFtX(FtN)であります。

自己紹介が長くなりました。
これは僕個人の考えでありXジェンダー(ノンバイナリー)当事者の総意でないことを予めお断りしておきますが、
僕は僕のような人間も、男性とも女性とも平和に共存できる社会になれば良いなと思っています。

しかし昨今のトランスジェンダーに関する議論を1年あまり見ていたところ、その一部は女性の定義さえめぐる内容であるにも関わらず
女性側が抱えている懸念や不安というものがあまりにも軽視されているのではないかと感じています。
(なお、このテキスト中の男性女性の定義は性同一性障害の特例法によって戸籍の性別を変更した者を含む現状の戸籍上の男女であるとします。
性同一性障害により戸籍の性別変更には至っていないもののその変更の途上にある者は例外として扱い、このテキスト中では考慮しないものとします。)

「トランス女性は女性です」というスローガンがあります。しかしこの「トランス女性」とは具体的には誰のことを指しているのでしょうか。
仮にその定義がトランスセクシャル相当であったとしても性別変更の進捗は個々で差がありますから、性同一性障害の特例法のように身体の具体的な状態が定義のおおよその線引きとなっているでもない限り
たとえそのカテゴリーの範囲をトランスセクシャル相当にまでしぼっても「トランス女性」という言葉が具体的にどういう状態の人を指すのかには曖昧さが残ります。

まして「トランス女性」という言葉には解釈によっては容姿や身体に関わらず、自身を女性であると考えているだけの人まで含まれることもあり得ます。
そこまで含まれるとした場合、それを女性ということにすれば男性器のある女性が生まれることになります。

そんな「トランス女性」という概念を一切の留保なく、受け入れる側である女性への聞き取りや女性達との丁寧な交渉も無く、受け入れる事を一方的に要求して良いものなのでしょうか?
これは女性の定義を変え、市井の女性たちの生活を大きく変えるほどの影響をもつ可能性がある事柄です。
だからこそ女性の不安や懸念の声にももっと耳が傾けられるべきではないかと僕は考えていますし、 結論を急ぎ横暴とも言えるようなやり方で一方的に押し通そうとすれば
それはかえってトランスジェンダーおよび類似したカテゴリーの印象悪化を招くのではないでしょうか。

それに僕自身も「トランス女性」の定義次第ではトランス女性が女性であるかには同意しかねます。
ツイッターというSNS上ではありますが、僕は立場上Xジェンダー(ノンバイナリー)の他にトランスジェンダーだけでなく性同一性障害などとも接点ができやすい。
しかも、そういったカテゴリーと言いますか、界隈との接触はもう10年を超えています。

そこで得た実感から言います。
当事者を名乗る人物の中には、不審な者が紛れ込むことがあります。
違和感があると言いながら診れる医師の元に通うでもなく、未治療の女性の体を持つ僕の同胞達に粉をかけてまわっているように見える人物を見たことがある。
そして下心のある男性の目線から僕が属するカテゴリー周辺を見れば、仲間を装い不純な動機で同胞に近付こうとする男性が出かねないことは容易に想像できる。

男性の身体能力は男性以外にとっては脅威です。

腕力だけでも脅威ですが、多くの女性は男性から性的な暴行を受ければ妊娠する可能性があります。
妊娠すれば望まずとも心身にも経済的にも多くの負担がかかり、また自身の心身や生活を守るためにやむを得ず中絶する場合においても
中絶はゼロリスクではなく、一部は感染症等によって生殖能力に不可逆的なダメージを受けてしまうこともあります。
そしてこれはXジェンダー(ノンバイナリー)のうちFtX(FtN)の特に身体的治療を行っていない者においても同様であるはずです。 女性の体を持っていますので。

安全面に多くの懸念を抱えたまま「トランス女性は女性です」というスローガンを肯定し受け入れれば、女性もFtX(FtN)も安心して日常を送るのが難しくなりかねません。
これは特に治安の悪い場において、その影響が深刻なものになる恐れがあります。
大多数の当事者界隈の人間にはそのような下心が無かったとしても、もしも他人の性別の自己申告を否定してはならないのだとしたら
市井の女性のみならず僕自身、そして僕の同胞達さえも身を守る事が難しくなりかねない。

そして定義が曖昧なままこのスローガンを肯定し受け入れるのは、安全面に懸念があるのは先述の通りですが
他にも当事者が集まるカテゴリーや界隈において、不純な動機で侵入してくる男性に対しての自浄が失われしまうという問題もあります。
これはXジェンダー(ノンバイナリー)自身も身体的な実害を従来より被りやすくなる可能性があるだけでなく
悪くすると不純な動機で侵入してくる男性に、性別違和と大なり小なり関係している全てのカテゴリーを乗っ取られかねません。

現状、共存のためには現実的に考えてどこかで線引きをし、「トランス女性」の定義を明確にする必要があります。
でなければ世間との交渉や調整はだまし討ちのような不誠実な方法をとりでもしない限り、おそらく不可能でしょう。

最後に、このテキストを執筆した後に本件について追加で気が付いた点は
僕のツイッターアカウントのこちらのツイート群でお話させていただいています。
よろしくお願いいたします。
https://twitter.com/xraria_px/status/1310773898422566915?s=20

※2021年9月編集部追記 ラニアさんのアカウントは現在見ることが出来ないようですので、リンクをはずしておきます。