『女肉男食 ジェンダーの怖い話』号外出します、その他。

1 さて、LGBT法案が通過してしまいました。

 手続きの疑問な点や党内で圧倒的だった反対意見については前回の記事で一部分書いています。

 で、これからについてです。

 まず、衆院、参院、両院で反対を貫いた方、ぎりぎりで賛成に回って法案の防御に関与した方々の名前を覚えておいてあげてください。「女性を守る議連」は多人数なのでご自分の選挙区にどの方がおられるかのチェックをしてください。参議院選挙はすごく先ですけどどうか彼らの名前も忘れないで。

 今回、法案通過に関する評価と今後の対策、警戒要素、提案等を『女肉男食 ジェンダーの怖い話』の「号外」にしました。この号外は鳥影社のサイトに掲載する予定です。さらに印刷したものを『女肉男食 ジェンダーの怖い話』の今後の出荷分に挟み込みます。既に御買上の方(ありがとうございます)はサイトでご覧になり印刷等ご自由に、但し、著作権は放棄しておりませんし、これを勝手に印刷した上で「ヘイトデマ」などと上書きして配る事は著作権侵害、禁止いたします。

 分量はB5紙一枚予定、反ジェンダー新聞と題してはいますが号外しかありません。遅くとも数日後には版元のサイトに出しますのでどうぞよろしくお願いいたします。四千字です。正誤表を兼ねて本に挟める最大の容量です。

2 号外には間に合いませんでしたが、経産省トイレ訴訟の最高裁判決が出ています。ここで少し触れます。判決文のリンクも見つけました。

 産経新聞オピニオン欄にこの件も含め私は投稿しています。が、いくら限られた字数とはいえ、実は判決以後の世情についての不安を訴えているだけです。というと?

 滝本太郎氏も言うようにこの原告は未手術の性同一性障害、ホルモン治療を受けながら手術したくとも体質的に出来ない人物です。いわば特例者志願の特異な境界例です。

 だがそれでも私が投稿で不安を訴えた理由は?この判決が個々の例であるというのに過剰運用されて、一般の職場の特例者でもない人々を特例扱いにしてしまう可能性があるからなんですね。判決を誤用流用しその影響下で現れる、つけこみ、なりすまし、まさに世情です。

 それは私がここの記事や新刊の中でひたすら心配して来た過剰運用です。判例は環境も原告の事情も独特ですし、訴訟においても、双方の主張の範囲内に限れば女性からの不安の訴えがなかったとされています(訴訟というのは双方の主張したこと以外は持ち込まれません)。一方、似たようなケースでも女性からの不安の訴えがあればそれは別の話です。つまりその場合は別の裁判を起こすしかないということですよね。しかし今後はそれを同じ扱いにするためにこの判決に言及し裁判なしに要求を通そうとする人がいるはずです。ていうか裁判すると言われたら何も判らず泣き泣きいうことを聞く人が多いですよね。

 なのでまず、前者の範囲というか特例性を認識し、拡散し、その一方で、三権分立における行政のレベルで出来る事を、「女性を守る議連」の議員さん等に陳情してみてください。裁判官も勝手に入ろうとする人を認めない補足意見を出しています。実は法の施行後についてのこのようなツイートまで出ています。

リンク

すると結局悪いのは誤導しに来る特定報道ですね。女性がそれを聞いて不安になり怖がるのは当然でしょう!!!

 選挙区にこの件で女性側に立ってくれる議員の方などがいれば頼みやすいですね?

 そして政府関係者は後々まで国が被告であったこの裁判について言及する場合には、まずその特異性についても触れ従来の女子トイレ運用は何も変わらないし最高裁判決を持ち出して勝手に女子トイレに入ろうとする人々には警察を呼ぶようにと付け加えてほしいです。ていうか判決が出るや否や原告でもない人が経産省でもない場所のトイレについて「この流れがあれば自分もトランスヘイター女の後について入れる」という「勝利宣言」を出している状態です。こういう人は判決文などまともに読みません。欲望のままに「反差別」をカタっているのです。そして実際、迷惑行為は増えるのじゃないですか。

 まあ世間の普通の人だって特に判決文なんか精読しませんから。

 そもそも本来の女子スペース運用については小倉将信大臣が国会で性別二元論=男、女に基づく=反クイア理論での運営を保証しています。この答弁は運用において既にジェンダーに対する肉体の優位を表明しているとしか思えません。担当大臣の国会答弁ですので、おそらく政府公約レベルの保証となるはずです。

 要するに今回の経産省のように違憲訴訟であっても原告本人あるいはそっくりの特別なケースにしか対応できないものとこの答弁の適用範囲とは違うはずですよね。にもかかわらず、--経産省のトイレ以外のトイレが、女性の不安を黙殺して勝手に動くとしたらそこには過剰運用の可能性があります。中には既に国会の議事録に残った答弁の意味を、これで一変したとまで言ってくるツイートまで出ています。

 そしてここではっきり言いますが、世情が忖度に傾き人々が恐怖にミスリードされていくことの責任を問われなければならないのは「これで入れる派」の強弁とともにこの件で正当な疑問や質問をまったく許さず、年来、偏向報道を続けてきた大半の大手メディア、さらに地方や私企業で強引な過剰運用を行った挙句に女子トイレの多くを消してしまった一部活動家等にあるということです。

 条文、制度、判決、それらは国民に時に本来の趣旨と違った使われ方による災難をもたらします。

 というわけで、内実はどうであれ、この判決自体にお怒りの方も中にはおられると思います。その場合の対応について、--ツイデモや署名も意見表明には有効ですが、最高裁裁判官罷免制度というものが一応あります。

 選挙に行くと、最高裁判事の名をずらりと書いた投票用紙を貰えますね?気にいらない判事の名前に印を付けられるようになっていると思います。しかし今までそれで実際に罷免された人は一度もないそうです。

 そもそも選挙まで気に入らない裁判官の名前を覚えておけるかどうかなんですよね?その時覚えていてその人に印をつければまあそれだけは民意といえるでしょう。問題はこの制度の運用方法がいまひとつ知られていないことです。例えばこの紙をそのまま投票箱に放り込んでしまうと、「全部の最高裁判事オッケー」という意味になってしまうのです。私は六年生の時に左翼の先生にそのことを教えてもらいました。さて、今回もやもやしている方はこの紙を「棄権します」と言って投票所にせめて、お返しください。

 また幸運にもその時点でまだお怒りになっていて裁判官の名前を覚えていられた方はどうかこの罷免制度をお使い下さい。と書いたのは、一国民として、単なる情報をお知らせしたまでですけど。

3 これも結局は違憲問題になるのではないでしょうか?石川県の条例制定について「感想」を述べます。

 石川県が新法=国法と趣旨が異なるかもしれない地方条例を作る可能性が出てきました。

 とはいえ、この条例案、本当に国法と趣旨が異なるのかどうか、今のところ私などには判りません。が、取り合えずは性自認ベースの運用や差別禁止条項などか入ってくるのかも。

 ただ、それで作っても平気なのか?実は、この国法は条例にひびかないという見解が石川県が有識者として招いたlgbt活動家から出ているのです。

 しかしこの意見の根拠はどこにあるのでしょう?

 それは国会答弁において、立法提出議員たちがその旨再度発言したからという一説に基いている可能性があります。ところがその一方「理解増進法で地方条例の暴走をおさえる事ができる」という意見もどこかにあったわけでこれ、一体どっちが正しいのか?

  リンク

 まず、日本国憲法九十四条は国法をこえた条例を作る事を禁止しています。もしそういう条例があっても最高裁で違憲判決が出るとその条例は最終的に無効になるようです。

 しかし国法に規定がないものでその地方特有の事情などにより、踏み込んだ条例をつくる事は許されるようです。俗称で上乗せ条例、横出し条例などと言われるものですね。

 でもともかくこれら全部は国法の趣旨や目的などとの関係性を判断して、その法を越えているものならば違憲、無効になります。環境条例などでより厳しい基準のある地方条例が存在する場合はあるようですが、そもそも理解増進法は全部の国民が安心するためにゆるく作ってある法律です。性自認に関しては号外に書きましたがちょっと心配な部分があるものの、ただこの国法と条例の上下関係についてなら個人的にはおそらく国会答弁より憲法の方が上に思えます。とはいえ、仮に市民団体がそこを訴えたとしても最高裁までは最短でも一年半はかかるでしょう?大変ですね。それでも石川県ではあえて条例化するという事なのでしょうか。

 海外観光を含む産業振興を性自認条例でという事なら、まずパスポート女性表記の外国人で、未手術の「トランス女性」をどうするのでしょう。

 でもまあ石川県はともかくそもそも各地の地方自治体には困惑しているところも多いわけですね。なおかつこの新法は国法だけれど理念法で罰則なしですから。

 とりあえずこの法律によって自分の考えを人に押しつけたりすることは出来ないはずです。

 そして何らかの改革に不安を訴える人にも留意せねばなりません。

 例えば、私の地元などは(今後はどうなるか判らないものの)教育委員会にもさし迫ったテーマは来ておらず、文化担当の部署も元のままです。しかもここの観光スポットである武家屋敷のトイレは数年前に作った時点で、女性専用とオールジェンダーという理想的作りになっていると(一寸だけ一緒に仕事したことのある)教育委員会の人から聞いています。

 当市の市長は維新系の保守、いろいろ問題はあったのですが、今回私は今まで投票していた野党系(女性弁護士候補)に投票するのをやめ、こっちのわけありの市長に投票してしまいました。結果は百八十五票差で現職の勝ち。究極の選択ですが既に仕方ないと思っています。

4 東京都現代美術館ドラァグクイーン問題はまだ経過中です。本名で書いた意見メールに一律のお返事が来ただけですが、書いた事の大半に答えてもらっていません。こちらからのメールはまだ公開しません。リンク

5 ムック『人権と多様性』の表紙について、一言だけ。

 加賀議員は公人です。鹿砦社は表現の自由を大切にする告発系ジャーナリズムです。なので発売前に目次から装丁までうるさく聞いたり、或いは他者の書いたものを校了前にいちいち見せろと言ったりする事は表現の自由を重んじる立場からはまず出来ません。大体自著ならともかく装丁の相談をムック(ブックとマガジンの合体した言葉ですつまり半分雑誌)でするという事はたとえ責任編集本人であっても義務とは言いがたい。そもそも、なんと言っても憲法二十一条は国民、しかも公人の加賀議員に対しこのような検閲を禁止しています。加賀議員は言論の自由を尊重して、なおかつ報道するべき女性の危機を報道したわけです。何の罪もありません。森奈津子氏が加賀議員に謝っているのは適切です。

 責任編集や版元に対する批判はそっちのけで、加賀さんの議員生命を叩きつぶそうとしている人々に対して、私は1日本は独立国です2女性は人間です3子供は無事に育たねばなりません、とだけ申し上げておきます。加賀さんはこの三項目を貫徹し全ての生物学的女性を守るためにとりあえず必要な公人です。

 以上。

 四月六日に本を出してからここまで、これだけ激変があると目が回ります。

 しかしまだまだ経過中です。皆さん、どうか警戒しつつ希望と共にお進みください。

 なお、法律に詳しい人々に相談しながら書いてはいますが、私は法学部で民事訴訟ゼミだっただけの人間です。最高裁で被告勝訴していますが素人です。どうかこの文はご自分で判断してお使い下さい。

 どうぞよろしくお願いいたします。

七月十五日

笙野頼子