ドナルド・トランプ米大統領は、就任初日の「ジェンダー・イデオロギー過激主義から女性を守り、生物学的真理を連邦政府に回復させる大統領令」に続き、1月28日に「化学的・外科的な身体損傷から子どもを保護する大統領令」、2月5日に「女性スポーツへの男性の参加を禁止する大統領令」を発令した。
化学的・外科的な身体損傷から子どもを保護する大統領令
2025年1月28日
合衆国憲法および法律により大統領として私に与えられた権限に基づき、ここに命令する。
第1条 方針および目的 今日、全米で医療従事者が、一連の不可逆的な医療介入により、大人は子どもの性別を変えることができるという過激で誤った主張のもと、感受性の強い子どもたちの身体を損ない、不妊にしている。この危険な流れは、わが国の歴史に汚点を残すものである。それは終わらせなければならない。
無数の子どもたちがやがて、自己の身体が損傷されたことを後悔し、子どもをもうけることも、母乳で子どもを育てることもできないという恐ろしい悲劇を理解し始める。さらに、こうした脆弱な若者たちの負担する医療費は、その生涯にわたって膨らんでいく。なぜなら、彼らはしばしば生涯にわたる医療上の合併症に苦しみ、自分の身体との戦いに敗れ、そして悲劇的なことに、不妊になるからだ。
したがって、米国は今後、子どもたちを一方の性別から他方の性別へと変えるいわゆる「性別移行（transition）」に資金の提供、後援、促進、支援、またはサポートを行なわないという方針を採用し、こうした破壊的で人生を変えてしまうような処置を禁止または制限するすべての法律を厳格に施行すること。
第2条 定義 本命令において、
(a) 「子ども（child）」または「children」とは、19歳未満の個人または個人を指す。
(b) 「小児科」とは、子どもの医療ケアに関連することを指す。
(c) 「化学的・外科的な身体損傷（mutilation）」とは、自己の性別を否認する個人に対して、通常の発達過程における思春期の開始または進行を遅らせるために、GnRHアゴニスト〔エストロゲンの分泌を抑制する薬剤〕やその他の介入を含む思春期ブロッカーを使用すること、および、アンドロゲン阻害剤、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどの性ホルモンを使用して、個人の外見を自己の性別とは異なるアイデンティティに一致させること、および、 個人の身体的特徴を、性別とは異なるアイデンティティに一致させることを試みる外科的処置、または個人の性器を、その自然な生物学的機能を最小限に抑えるか、または破壊するよう変更または除去することを試みる外科的処置のことである。これは、時に「ジェンダー肯定ケア」とも呼ばれている。
第3条ニセ科学への依存を終わらせること
(a) 科学的な整合性を欠く世界トランスジェンダー保健専門家協会（WPATH）の指針に後押しされた医学的必要という口実のもと、化学的・外科的な身体損傷によって子どもたちに明白な危害が加えられている。WPATHガイダンスに対する科学的懸念にもとづいて、
(i) 各機関は、WPATHの「ケア基準第8版」を含む、WPATHのガイダンスに依存するすべてのポリシーを撤回または修正すること。
(ii) 本命令の日付から90日以内に、保健福祉省（HHS）長官は、性別違和、急速発症性性別違和、またはその他、アイデンティティに基づく混乱を訴える子どもの健康増進のためのベストプラクティスに関する既存文献のレビューを発表すること。
(b) HHS長官は、適用法に準拠し、かつ適宜、性別違和、急速発症性性別違和、またはその他のアイデンティティに基づく混乱を抱える未成年者、あるいは化学的・外科的な身体損傷を求める未成年者の、健康改善に向けた実践を導くデータの質を高めるために、あらゆる利用可能な手段を用いること。
第4条化学的・外科的な身体損傷への資金提供の停止 医学部や病院を含む医療機関に研究助成金や教育助成金を支給する各行政部門または機関の長は、適用法に準拠し、かつ行政管理予算局長官と協調して、連邦政府の研究助成金や教育助成金を受け取る機関が、子どもに対する化学的・外科的な身体損傷を中止することを確実にするために、ただちに適切な措置を講じること。
第5条 保健福祉省長官への追加指令
(a) HHS長官は、適用法に従い、以下の法律、プログラム、問題、または文書に関連する可能性がある規制および規制下にある措置を含む、子どもに対する化学的・外科的な身体損傷を終わらせるために、あらゆる適切な措置を講じること。
(i) メディケアまたはメディケイドの参加条件または適用条件、
(ii) 州のメディケイドプログラムに関連する臨床的乱用または不適切な使用の評価、
(iii) 薬物の使用に関する義務的レビュー、
(iv) 「患者保護並びに医療費負担適正化法」の第1557条、
(v) 品質、安全性、監督に関する覚書、
(vi) 必須医療給付要件、および
(vii) 「国際疾病分類」第11版および、「精神疾患の診断と統計マニュアル」第5版を含む、連邦政府が資金提供するその他のマニュアル。
(b) HHS長官は、2022年3月2日付の「ジェンダー肯定ケア、公民権、患者プライバシーに関するHHS通知およびガイダンス」と題するガイダンス文書を速やかに撤回し、司法長官と協議の上、本命令の遵守を保障するために行動する内部告発者を保護する新たなガイダンスを発行すること。
第6条アメリカ国防厚生管理本部 国防総省は、アメリカ国防厚生管理本部（TRICARE）〔全世界に展開している米軍兵士への医療サービスを統括する国防省の部門〕を通じて、18歳未満の約200万人に医療保険を提供している。国防長官は、適用法に準拠し、かつ適宜、TRICAREの適用対象から子どもの化学的・外科的な身体損傷を除外するための規則制定または規則制定に準ずる措置を開始し、TRICAREの医療提供者向けハンドブックを改正して、子どもの化学的・外科的な身体損傷を除外すること。
第7条 保険会社に対する要件 人事管理局長官は、適用法に準拠し、適切に以下の措置を講じなければならない。
(a) 2026会計年度の連邦職員健康保険（FEHB）および郵便局職員健康保険（PSHB）のプログラム要項に、外交官の福利厚生制度を含む適正保険会社が小児トランス手術またはホルモン治療の適用を除外することを明記した規定を含めること。
(b) FEHBおよびPSHBの保険料について、適切な相応の減額を獲得するための交渉を行なうこと。
第8条 司法省への指示 司法長官は、以下のことを行なう。
(a) 司法省による合衆国法典第18編第116条の施行を審査し、女性器切除からの保護措置の施行を優先すること。
(b) 連邦検事総長およびその他の法執行官を召集し、全米の州および準州における女性器切除に対する法の施行を調整すること。
(c) 化学的・外科的な身体損傷の長期的な副作用について一般市民を誤解させる可能性のあるいかなる団体による、消費者に対する欺瞞、詐欺、食品・医薬品・化粧品法違反を終わらせるために、調査を優先し、適切な措置を講じること。
(d) 連邦議会と協議の上、医療専門家による化学的・外科的な身体損傷によりその健康な身体部分にダメージを受けた子どもたちとその親たちの私的権利を制定するための法案の起草、提案、推進に努めること。この法案には、長期の時効期間を含めること。
(e) 自分の子どもの健全な発達を支持する両親から親権を奪い取ることを進めているいわゆる「聖域州」による児童虐待行為を終わらせるために、調査を優先し、適切な措置を講じること。これには、「親による拐取防止法（Parental Kidnapping Prevention Act）」の適用や、認められた憲法上の権利を考慮することを含む。
第9条 適切な進捗の保障 本命令の日付から60日以内に、本命令に基づく責任を有する機関の長は、大統領補佐官（国内政策担当）に対して、本命令の執行の進捗状況の詳細と今後の行動の予定を記載した単一の統合報告書を提出すること。大統領補佐官（国内政策担当）は、本命令に基づく責任を有する機関の長（またはその指名者）を定期的に召集し、提出文書の調整と準備を行なうこと。
第10条 可分性 本命令のいずれかの規定、またはいずれかの規定の何らかの個人または状況への適用が無効であるとされた場合でも、本命令の残りの部分および他の規定の他の個人または状況への適用は影響を受けないものとする。
第11条 一般規定
(a) 本命令のいかなる規定も、以下を損なう、あるいは影響を与えるものと解釈されてはならない。
(i) 法律により行政省庁または各機関、またはその長に付与された権限、
(ii) 予算、行政、立法に関する提案に関する行政管理予算局局長の職務。
(b) 本命令は、適用される法律に準拠し、かつ、歳出予算が利用可能であることを条件として実施されるものとする。
(c) 本命令は、いかなる当事者による、合衆国、その省庁、各機関、その役員、職員、または代理人、あるいはその他の人物に対する、法または衡平法に基づく強制力のある実体上または手続上の権利または利益を創出することを意図するものではなく、また、実際に創出するものでもない。
ホワイトハウス
2025年1月28日