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【初心者向け トランスジェンダー問題】性別記載変更法(仮称)の問題点について
先日、日本学術会議 法学委員会 社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会がトランスジェンダーの法的性別変更のための新法案を提言しました。「性別記載変更法」(仮称)と呼びます。この記事では 、以下性別記載変更法とします。その問題点を挙げていきます。
トランスジェンダリズムに関わる言葉の説明
トランスジェンダリズムとは、生物学的な身体の性別ではなく、性別を自己決定できるとする思想です。
TRA(Trans Right Activists)とは、トランスジェンダリズムを推進している人のこと。
トランスジェンダーのことを、心と体を一致させたい人だと思っている方が多いと思います。
男性から女性に変わりたい人、女性から男性に変わりたい人がいますが、その人たちのことをトランスジェンダーと呼びます。トランスジェンダーは、必ずしも、身体の性別を変えたいのではなく社会的な性別を変えさえすればいい人たちのことも指します。
トランスセクシャルは、体に違和感のある、真剣に体から生殖器官を取り去りたいと望む人たちです。
トランス女性、トランス男性は、性自認、ジェンダー表現を変えるだけで名乗れるので、「ペニス付きの女性」「妊娠可能な男性」を含みます。トランスジェンダリズムは、単なる女装や、自分が女性だと言い張る完全な男性も、女性を名乗れることを可能にします。
性別には、社会的な性、生物学的なもともとの身体の性の二つがあります。
社会的な性のことをここではジェンダーと呼びます。ジェンダーは、男性らしい、女性らしい、の「らしい」にかかる要素のことです。具体的に言えば、服装や振る舞いなどのことです。
トランスジェンダーは、たくさんの概念を含みます。それをアンブレラタームと言います。
身体に激しい違和感を持ち、生活に不自由があり、生殖機能を取り去ってから、戸籍の性別を変えたいと願う人たちのことをトランスセクシャルと言います。
トランスジェンダーとトランスセクシャルは違います。
トランスジェンダーの中に、トランスセクシュアルを含みますが、実態を伴っていません。
トランスセクシャルには、すでにトランスセクシャルという名前があるので、トランスジェンダーを名乗る必要がありません。
トランスジェンダリズムを推進するために、すでにあるトランスセクシャルのイメージを盾に利用しているのが現状です。世間ではトランスジェンダーと言われると、身体と心を一致させたいと願って手術をする人たちだというイメージがあります。それを利用して、性自認、ジェンダー表現だけで性別変更をできるようにしようとしているのです。
性別記載変更法について
今、戸籍の性別を変更するためには、性別適合手術が必要です。性別適合手術(SRSとも呼ばれます)は生殖器官を取り去る手術のことです。
しかし、性別記載変更法は手術なしで、戸籍上の性別を変更しようという法案です。
これにはいくつかの点で、問題があります。
この提言が通ってしまうと、社会に混乱が起きます。
①女性専用スペース(女湯、女子トイレ、授乳スペース、シェルター)に自称女性、つまり男性が入る
②戸籍ベースではなく、自分の思う性別で性別を決められるようになるため、統計などが取りにくくなる
③女性刑務所に男性が入る事態になる(海外では実際に、女性刑務所でのレイプが起きています)
④射精機能のある母、妊娠した父、という人たちが現れるので、親子関係が混乱する
⑤戸籍が生物学的な体の性別で決められるのではではなく、「性自認」ベースで決められることになってしまう
⑥医療で混乱が起きる
⑦介護の現場で、同性介助ができなくなる
⑧女性差別が覆い隠されてしまう
*性自認とは、自分の身体とは関係なく、自分で考える性別のことです。なので、これが基準になってしまうと、「ペニスのある女性」というとんでもない人が存在してしまいます。
今は、男性機能を取り去って、女性に近い体の人たちだけが、戸籍も変更して、女性を名乗れますが、#トランス女性は女性です は、身体が完全に男性のままの人たちを「女性」と呼び、女性と同じ振る舞いをさせ、社会からも女性として扱うように求めるスローガンです。
しかし、性別記載変更法(仮称)を提言した人たちは、上記のことを推し進めようとしています。
LGBT議連は、法律を変えても、トランスジェンダー当事者は迷惑をかけないと言っていますが、それは詭弁です。
懸念していること
⑧の女性差別を覆い隠してしまう、というのは次の状況があります。
例えば、男性の身分で、就職したのにもかかわらず、女性を名乗るようになったら、その人は、男性としての収入を得たままになります。
女性の収入は、だいたい男性よりも三割以上は低いです。
こういうことが大規模に起きると、統計上、女性の収入は増加した、ということになります。
女性の政治家を増やすためには、トランス女性を増やせばいいことになります。
でも、それは、身体の性別が女性の人を増やすことにはなりません。
海外では、箇条書きにしたことが、すでに現実になっています。
女性専用のトイレが、事実上男性も入れる共有トイレになっていて、幼い子供、少女たちが、知的障害のある女性、お年寄りなどが脅威にさらされています。
女性刑務所では男性がレイプした事件があります。また、暴力から身を守るための女性のためのシェルターには女性だけが入れると言ったら、ドアに尿をかけられたり、動物の死骸を置かれたりしています。
トランス女性を彼と呼んだだけで、仕事から解雇される事件もありました。
また、男性が、女性用のサロンでブラジリアンワックス(股間の脱毛)を断られたことを裁判にしています。
女子更衣室に、男性が入ったが、問題視することができなかったというニュースもありました。
女湯に、男性がいきなり入ったらどれほど怖いでしょう。
同性介助の現場で、自称女性が入ったら、介護される人は、どれだけ怖いでしょう。
私自身、介護を受けていますが、ヘルパーさんが男性だったら、家の中に入ってもらうことに抵抗があります。
トランス女性は女性です の問題点
特に問題にしたいのは、トランス女性の概念や思想です。
トランス女性に、当たり前の権利(自由を侵害されない、人権、細かく言えば教育や就労時に差別されないなど)、つまり人間としての権利はあることは前提です。
2018年末に、#トランス女性は女性です というタグがツイッターでが流行りました。
このトランス女性のトランスはトランスジェンダーを指します。
つまり、トランス女性には、「ペニス付きの女性」が含まれます。
もし、トランス女性が女性ですというスローガンがまかり通ったら、ペニス付きの女性、要は女性を名乗っただけの男性にも女性としての権利があるということになります。
女性としての権利とは、女性専用スペースで安全に過ごすこと、女性特有の病気で医療にかかれること、特に婦人科で診察してもらったり、同性介助の原則を求め、介護を安心して受けられたりする権利のことです。身体に関わる権利全般です。
もしも、トランス女性が女性であり、女性としての権利があるなら、それは行使できます。行使できない、名ばかりの権利というものはむしろあってはなりません。権利があれば行使したいと思うのが人の常です。
「ペニス付きの女性」という概念があれば、それを大義名分にして、自称女性の男性たちが女性専用スペースに入ってくるでしょう。今でさえ、性犯罪目的の侵入者はしょっちゅう報道されます。トランス女性の性自認が女性だったとしても、男性の身体のまま、女性専用スペースに入ることは、女性にとって脅威です。
ただ、今は、法律があるためそうした人たちは不法侵入罪で罪に問えます。
しかし、性別記載変更法が成立してしまったら、今後、女性専用スペースに入る、自称女性、ペニス付きの女性を処罰できなくなります。
経緯
また、2018年の #トランス女性は女性です のタグが流行ったころには、トランスジェンダーへの差別反対の声明・署名活動が行われました。
フェミニズムやジェンダー問題に造詣の深い学者が先導したものです。
それに対して、東京大学の三浦俊彦教授が批判しましたが、それに対してさらに東京大学関係者有志の声明がでました。
三浦教授はそれに対して応答し、さらにいくつかの疑問を呈しました。しかし、その疑問は答えられませんでした。
声を上げた女性たちは、トランスジェンダーの人たちの人権を侵害されることを望んだわけではありません。トランスジェンダーの人たちが自由を尊重され、当たり前の人権が守られるのは当然のことだと考えていました。
しかし「女湯には入らないでほしい」「女性用のトイレには入らないでほしい」と言ったこと自体を差別だとされました。それは、女性専用スペースに入ることも、トランス女性の権利だとされたからです。
だから、入らないでほしい、ということは、トランス女性の権利を侵害しようとしていると受け取られたのです。
ペニス付きの女性、つまり、身体的男性には最初から、女性としての権利はありません。公共の利益に基づき、ペニス付きの女性、つまり男性は、女性専用スペースに入ることは制限されるべきです。そうした場所は、身体の性で分けられるべきです。
固定的な性別役割分担意識の強化
また、トランスジェンダーは、固定的な性別役割分担意識を強めます。
女性と男性の違いは、身体が基本にあります。
しかし、男性が身体を作り変えずに性別を変えようとしたら、社会的なふるまいや服装を女性的にするしかありません。それこそが、性別役割分担を強めることに他なりません。
身体を変えないまま、社会からの扱いを、男性から女性にしてほしいというトランス女性は、振る舞いや、服装、見た目で、女性らしくふるまうことで、女性として認められようとします。
女性の社会的なふるまいや服装は、女性の本質ではありません。
トランスジェンダリズムは、女性の本質を、「ジェンダー」だとします。ジェンダーとは社会的な性別のことです。性別を「セックス」ではなくジェンダーに変えようとする試みなのです。
TRAからの誹謗中傷
TRAたちは、私たちのような恐怖におびえている人たちにひどい中傷をします。
私は、性犯罪被害者ですが、twitterで女性専用スペースに入ってほしくないと訴えたところ、死んでしまいたいと思うほど、連日脅されました。それは私だけのことではありません。何人もの女性が傷つけられました。「女性にはペニスはついていない」「男性には女性専用スペースに入ってほしくない」と声を上げた人たちがいます。
特に性犯罪被害者は、必死で抵抗しました。
しかし、その抵抗は、トランス女性に対する差別だとされました。声を上げた人たちの多くは、差別者だと名指され、暴言を吐かれたため、委縮し、希死念慮(死にたいと願うこと)に陥った人が大勢います。私もその一人です。
ハリーポッターの作者として有名なローリング氏は、#トランス女性は女性です、に対抗して、sex is real つまり性別は現実だと言っただけで、死ねと言われています。
心が女性なのか男性なのか、他人からは、区別がつきません。見た目で判断するしかありません。でも、トランスジェンダリズムは、見た目で性別を判断して、それが心の性別と違っていた時、「ミスジェンダリング」と言って、激しく非難します。
だから、例えば次のような状況では、問題が起きます。
子どもや少女、お年寄り、障害者がトイレにいたとき、もし男性に見える人が入ってきたら、その人をどう考えたらいいと教えればいいのでしょう。
今までならば、男性がいたら、逃げろ、通報しろと言えばよかったのです。しかし、トランスジェンダリズムが進んで行ったら、それは通らなくなってしまいます。
トランスジェンダリズムを推進すると、最も弱い人たち――子ども、お年寄り、障害者が犠牲になります。
だから、性別記載変更法は、止められなくてはならないのです。
用語解説と参考URL
”トランスジェンダー:出生時に割り当てられた性別(用語解説⑥)とは異なる性別の性自認・ジェンダー表現のもとで生きている人々の総称(性同一性障害者を含む)。出生時に割り当てられた性別は 女性であり、男性として生きている人を「トランス男性(Trans-man)」といい、出生時 に割り当てられた性別は男性であり、女性として生きている人を「トランス女性 (Trans-woman)」という。”
提言「性的マイノリティの権利保障をめざして(Ⅱ)―トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けてー」より引用
”ジェンダー表現: ジェンダー表現とは、「個人の服装、髪型、装飾品、化粧を含む身体的外観、および動作、 話し方、振る舞い方、名前および身分証明による自己のジェンダーの表象であり、ジェン ダー表現は個人の性自認と一致する場合もあれば一致しない場合もあることに注意すべきである」(「ジョグジャカルタ原則(性的指向および性自認に関連する国際人権法の適用に 関する原則)プラス 10(2017)」前文第4段落。)”
提言「性的マイノリティの権利保障をめざして(Ⅱ)―トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けてー」のポイント