前回お約束したテーマのうちの一つ、ともかく公開します。もうひとつは少し後で。ていうのもこれ急ぎの案件なので。そう、新法の出来た、今選挙中の杉並区です。 でも杉並区だけの問題じゃないですよ。というのも、この文の大きいテーマそれは--新法と同じだけ大切なその運用方法についてなんですから。ここから皆さんに考えて欲しいのです。既に条例のあるところも、今から出来そうな地方自治体の方も、どうかお読みください。今回は繰り返しが多いですがしっかり覚えてください。
というわけで、「杉並区」です。花の東京、天下の二十三区、中でも先進的?
という噂の杉並において、今後は各地のモデルケースになるのかもしれない新しい条文が成立しました。ええ、私の表現法だとジェンダー新法とかそういう言い方になりますけど。私に取ってはいろいろ質問がしたくなるような「?条例」です。
そんな性の多様性条例が四月一日から、杉並区で施行されました。私はその条文を杉並区のホームページで読み、その他にQandAも読んでみました。条文が理念、QandAが実行方針、または区民へ提示する具体的対策という事でしょうね。
なお、QandAの方は市民の意見によって変えていく事が可能とあります。つまり良い意見によって改善される望みがまだあるという事です。無論、その一方悪い意見によってねじ曲げられる可能性もあるかもしれません。ただ、……。
条文とQandAだと条文が上、条文を越える内容はあり得ないという事です。え、なんですって?
「お前いつから杉並区民なんだよ」って?いえ別に千葉県民ですが何か?
つまりどこにあったって、性自認の法制化なんて怖いですから。例えば千葉などだと「杉並区、かっこいい」と思ってまねするかもしれません。
そもそも新法というものは出来ればその日から脱法行為が出る。ばかりか不適切な運用も発生しますから。ほら、何が怖いって、……。
例えば英国平等法なんて、未手術の男が女子スペースに入る権利なんか条文においては何も認めてなかった。でも、実際は男が女子スペースに入っていた。それはまたどうやって?
一説には英国の活動家が教育、警察、司法等にそう信じ込ませてしまったからだと言われています。まあ聞いた当時は不可解としか思いませんでした。FLJの皆さんもそう思うでしょう。でね、……。
私は杉並区について考えていた時、たまたまこむぎさんという方のスペース(ツイッター機能の方の)を発見したのですよ。聞いてみて、ぎょっとしたんですよ。まあ英国の例と同じ展開になるのかどうかは判らないですけど。区長さんだってけしてそんな意図なんかないに決まっていると思うけれど、でも、なんにしろ、ひとつの条文が出来た時は、しっかりその後を、運用方法を見ていないと駄目なわけで。
なお選挙前なのでこの一般区民のこむぎさんのスペースへのリンクも、直接は貼りません、理由?
そこにひとりの杉並区議会議員が参加していたからです。今選挙中だから。
でもこのスペースもどなたかが多分ツイートで拡散していると思います。どうか見つけてください。私は後で公開されていたスペースの録音を全部聞きました。
ちなみにこのこむぎさんという方は、かつてここの区長さんに選挙協力し連帯していましたが、今は性自認について反対意見を述べている杉並区住民です。
ただ、ある議員の尽力でこの条文自体にはかなりの改善がされています。
そう、この改善に尽力したのが、実はこのスペースに参加している。
杉並区自民党幹事長で杉並区議会議員の大泉やすまさ氏です。
彼は自分の選挙よりも女性の安全が大切、今少しでも修正をかけないと大変だと思い、ここの区長さんの元で条文案を作ったお役所と交渉し、まだしもな案にしようとした。
なお、この大泉氏、ただいま、選挙苦戦中です。大変だそうです。
ばかりではない、この条文の当面の運営が実は心配なことに、と彼は訴える。
というと?折角、彼が精一杯安全なところにまでこぎ付けたというのに。
運営が条文を「越えてしまっている」可能性があるというんですね。
それはQandAという市民にむけた説明、正しい運用法を指導した文章です。
運用のために書かれた文ですので、当然、条文より下位の存在です。
が、これ私のような素人の目にはなぜか条文にない規則を抱摂しているようにも見えるのです(今からその部分について具体的に述べます)。
おっと、その前にひとつ、この大泉氏実はここで「性自認についての懸念があるので、この条文の成立時には賛成票を投じた」とも語っているのです。まあ無論そう聞いただけでは、え?え?え?って思うわけですけど、でも、話を聞いてみると?疑問氷解です。
要するに「性自認」という例の一語を大泉氏は頑張って条文から取り除こうとし、微調整のために完全な対立を避けて努力したという話なんですねえ。そしてどうやらある程度成功したという解説でした。で、この条文はまず、……。
区長の方針の元にお役所が作る=実務はお役所です。そして大泉氏はお役所に細かいところの修正を提案、「もし自分が賛成票を投ずるするのなら」という前提で協議を重ねていった。だっていきなり反対しても数では負けているし、そんな中反対だけ叫んでも相手方に自分側の要望は聞いてもらえないと判断したとのことです。
結果、この条文、どのように修正されたのか?例えば性自認による差別はどうなったのか?大泉氏はともかく、性自認という言葉を避けようとしたんですね。
結果?それは少なくとも現状のわが国の与野党合意案より相当ましなものになっていると、(私には)見えるんですね。例えばそこには性自認による差別の禁止等が直には入っていません。さて、これがその第3条です。この条文の内容は?
(性を理由とする差別等の禁止)となっています。差別禁止条例になっている、第3条です。
性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進は、性的指向又は性自認を内心にとどめることを希望する者の平穏な生活の確保に配慮しつつ、全ての区民が、性を理由とする差別を受けないこと、性の多様性をめぐる個人としての尊厳が重んぜられること及び性別、性的志向、性自認等にかかわらず、自の意思によって地域社会のあらゆる分野における活動に参加し、能力を発揮する機会が確保されることを旨として、行われねばならない。
要約します。まず、性を理由とする差別禁止です。次に性の多様性をめぐる個人の尊厳が重んぜられること、で?
最後にやっと性自認が出てくるんですね。性別、性的志向、性自認等にかかわらず、活動に参加し、能力発揮の機会が確保されることを旨とすると。
差別禁止というのは性についてだけ、性自認の認められる範囲は限られています。
で、第4条です。(区の責務)とあり、二項目あります。
なお、国法の条文と同様に、この条例でも第1項を表す1という数字が欠けていますのでそのままにします。サイトにあるまんまを書いています。
何人も、性を理由として不当な差別的取扱いをすることその他の性を理由として個人の権利利益を不当に侵害する行為をしてはならない
見てのとおりです。
これ「性自認」による差別は特に禁じていない(でしょ?)。不当なとあるのは差別でなく区別だという事ではないですか?差別に関してはこれ「性」による差別とあるだけです。ここがポイントです。
この条文において性という言葉、これ性別という意味ですよね?つまりトランスライツやジェンダー平等ではなく、セックスベースドライツ、普通の、憲法にうたわれる男女平等の主張になっていると(素人には)見えます。
性自認についてはただその後に(これは第2項という意味の2が書いてあります)。
2 何人も、正当な理由なく、本人の意に反して、性的指向若しくは性自認の表明を強制し、若しくは禁止し、又は性的志向若しくは性自認を明らかにしてはならない
まあ実は私としてはこの2だって???なのですがそれでもこれは同性愛のアウティングとか性自認のアウティング等を強要してはいけないという、わりと穏当な事が書いてあるだけです。でも本当はそれだって憲法や一般の人権の範囲で対応出来るでしょう?
ともかく大泉氏が、この「性自認」を「性」に変えてくれたとの良いと思いました。
つまり、そもそも日本の現状において、性という言葉は、……。
これは生物学的な身体性別の事、性自認、心の性別(=???)とはまるで違うものです。というのも日本の国法にはまだ、「ジェンダーミーンズセックス(参照筆者新刊P43)」と書いていないからです(この場合のセックスとは身体的な性別の事ですいわゆる性交は意味していません)。さらにもし書いていてもそれが違憲になる可能性も残っています。
そもそも憲法には性別という言葉はあるけれど性自認という言葉は入っていません。
ただ、もし現在、理解増進会がそのサイトに掲載している性自認の循環論的定義が国会を通過してしまったら、おそらくこの大泉氏の努力は無になってしまいますね。さらにそこからは国中で裁判でも起こって憲法判断が出るまでの間、性自認という言葉は暴走しますね。
というのも、今問題になっている例の理解増進法の与野党合意案にあるこの性自認定義
の循環論の場合、どう見てもカリフォルニア州法CC51にあるジェンダーミーンズセックスの亜流なんです。私は法律の素人ですけれど、素人から見ても穴があるんです。
つまりこういう条文の修正は玄人でも間違える。だって、国法レベルでさえ、理解増進法の中に入っている循環論、これを安全だと平気で言ってしまう専門家がいるのですから。
一方、この杉並の条例は私にはそれよりもましに思える。この修正に自分が関与したと主張する大泉氏は、採決だと数で負けるからその後の対話によって、少しでも女性の防衛をと思い、自分で出来るだけ縛りを掛けた法を通すために、敢えて賛成票を投じたと言っています。ただ、こういう方法=「賛成して調整側に入り、せめて少しでも喰い止める」というのは国民民主党がTPPや高プロの時に付帯決議を求めてやった方法で、これをやると誤解もされ易いし、中には失敗する人もいるわけです。でも或いは怖いもの知らずなのかもしれないけれど、彼は実際女性のために努力したわけです。
とはいえ、国民民主党については私はまだ怒っています。ただ大泉氏が性自認という言葉を取ってくれたのはこの段階ならばGJだと思います。
ただ、何にしろ結局、国法には心配事が一杯なんですねえ。というと? 例えばGID特例法の手術用件が撤廃されたら、それだけで大泉氏の努力はやはり無になってしまいます。女権、言論、家庭、子供の未来、性的少数当事者にまで影が射すわけです。でもともかく現段階、条文段階で自分の議席よりも女性の安全をと彼はくい止めを試みたんですね。
無論、この性の多様性条例にはその成立自体に反対した議員さんや議員候補者たちもいて、選挙中の今も健闘してくれています。彼らも当然、「性自認」という言葉に反対です。例えば杉並区議会議員では?
わたなべ友貴氏、ほらぐちともこ氏、杉並区議候補では田中ゆうたろう氏という方が反対されています(他の人もいるとしたら私の検索不足ですすみません)。
なお、たまたまかもしれませんが、この三人とも最近(選挙中とは限らないですが)街頭で何らかの妨害に会っていると訴えておられました。大変気の毒です。
一方、大泉氏は志は近いけれど方法論それ自体はかなり違う。ただ、……。
この件に関して敵ではないだろうと私は感じました。とはいうものの、……。
本人はここまで頑張ったのにも係わらず、この差別禁止条項から取ってしまったはずの性自認のもっとも核心である差別禁止が、なぜかQandAに入ってしまっている、という話なんですね。
普通ならただの誤植と考えますよね、だって条文にないことなんて入るはずがないでしょう?え、細かいですか?でもやっぱり変ですよ。
これも杉並区の公式サイトに公開している、QandAの、……。
第4条のQに呼応したP3のところです。Q4「不当な差別的取扱いとは?」
さて、この、A4を見てみます。
不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、性的指向又は性自認を理由として、不利益な取扱いをすることです。
ほら、入っている。
しかし性自認という事は第3条の差別禁止条項では性以外の理由とは無関係でしょう?
また、第4条の「区の責務」においては「性を理由として不当な差別的的取扱いをすることその他の性を理由として個人の権利権益を不当に侵害する行為をしてはならない」
第2項に、アウティング等についての制限があるだけです。
またその他の条文には性自認の定義も入っているけれどそれはただの定義として入っているように私には見えます。
「性自認、自己の性別についての認識をいう」、とあるだけです。
ただそれでもどうせ性自認ですから肉体を重んずる仏教徒の私には不条理としか思えません。そしてやっぱり大泉氏が差別禁止のところで性自認を取ったというのはよくやったと言うべきだと思います。でもお役所はその意味を理解していたのだろうか。
なお、このQandAに関しては何を差別とするかの具体例がありますが、しかしそれが何であれ、そもそも本来、条文のこの部分に入っていない言葉なのに、QandAの回答のところにはあるんですね。いいんですか?
後、気になるのは女性スペースについてのQandAですよ。
「この条例の規定によって、どのような場合でも性自認が戸籍上の性別より優先されるわけではありません」とある。それでは入れる場合があるという事ですね?
まあ、特例法による戸籍変更者で一切性犯罪も侵さず医師のガイドラインをきちんと守り、社会と調和し、周囲と仲良くしている人なら管理責任者の判断によって入れる可能性は高いでしょう。でもね、ここにはそれと具体的に書いていないわけです。
そこがはっきりと書いてないのです。例えば「GID特例法による戸籍変更者のみ」とか、或いは(これは法律にもないですが今後もし運用の厳格化として付け加えるならば)「特例的な戸籍変更者であっても、性犯罪歴や女性を不安にする言動があれば使用禁止」だとかの具体例が書いてないんです。
ていうかそれより何よりね、差別禁止についての第4条、性自認の扱いは?差別から保護する対象ではありませんね?つまり、条例の差別禁止条項にない言葉が運用法の中に入っている。これに対して、彼らは疑問を呈しているのです。また私のような何も判らない素人が見たら、これを放置しておいて英国のようにならないという保証はないと心配してしまいます。ええ、誤植ならいいんです直せばいいだけです。ていうか、意見が出てくれば直りますよね?というと?
先述のように、このQandAは区民の意見によって変えていくとあります。だったら条文にない言葉なんか区民のご意見でたちまち消えるでしょう。
でももしこのままなら、第4条の運用の中に、「性自認」は入っているように見えてしまいます。そしてもし訂正がなければ?
例えば銭湯などだと、現行法で女湯に関し、「どんな女性を入れるか、身体女性なのか、性自認女性なのか」という決定は管理者の判断に委ねられていますよね?
仮にもしその管理者に向けて、この該当する条文には入ってもいない性自認を主張し、その上でこの第4条に関するQandAのAだけを見せれば、管理者はびびるのではないでしょうか?その管理者がもし、不当にであっても、ヘイター、ヘイター、と言われて耐えられるでしょうか?英国平等法はどんな運用をされていたでしょうか?
性自認に関する差別禁止はこの条文に書いてありますか、ないのでしょう?なのに差別禁止のパーツにいきなりその運用が出てくるのですね?
そしてこれがもし誤植ではないとすれば、あるいは私のような素人などに判らない何か難しい意味があるのでしょうか?でも一般区民の素人の方に説明するためのQandAですよね。素人が見たら、困惑しますよね、だって書いてない事を行うわけですから。
とはいうものの、私は千葉の人だから何か聞く権利はないのだとは思いますけれど。
ただ、杉並区に住民票のある方なら教えて貰えるのではないかと思います。
ていうか、この区長さん動画を見たところ大変穏やかそうな話の判るタイプに思えますよ?
海外生活の長かったお方だそうで、それなら人とのコミュニケーションは得意なのではないでしょうか。そして今、選挙中ですね。動画では住民との対話を求めて笑顔で街頭に立ち、手を振っておられます。「区民と対話する意志があるという表現」に思えてなりません。しかしこの動画も選挙前なのでここには張りません。
さて、最後です。
大泉さんは自分の選挙そっちのけでこれを頑張った。だけどこのままだと落ちそうです。しかし、もし、……。
このQandAの運用が意外な展開になってしまった場合、条文に関与し、一番知っている彼がもし落選していたら、それで議会に質問に現れる事も出来なくなっていたら、区民は不便ですよ?
ていうかもし彼が案外に当選出来たとしたら(難しいそうですが)?真先にする用は、ともかくこの条文と回答の食い違いを問いただす事なのです。だって、区長氏を監視する事は他の区議の「選んでくれた人から託された」義務なんだから。
ちなみに、スペースの録音はまだ残っています。けして面白い対話ではないのですが、杉並区民の方、ちょっとだけ我慢して聞いてみませんか。自己判断のために。
リンクは通常のように貼っていません。公職選挙法とか本当にいろいろ判らないですので。不調法で申し訳ございません。
さて、読んでいただきありがとうございました。
こんな世の中ですが、皆様ともかく、辛くとも選挙にはお出掛けください(白票はお薦めしていません)。
四月十一日
笙野頼子