笙野頼子
第二回 お待たせいたしました。新刊の準備をしていました。その後はさすがに疲れ果て、これを書くのさえ難儀、なおかつ結局、第二回で終える予定だったものを気がつけば長く書いてしまい、ここまで遅れました。数回に分けて連載いたします。どうぞよろしくお付き合いねがいます。まず、前回の続き少し。
例の女千字文(とりあえず略称)エッセイの方、最近また何かnoteの反応が出たようです。ただ通読するに、私が応答すべき相手ではないようです。というのも向こうはのっけから私に、自分の性別を尋ねているからです。知るはずないでしょう。で?私が「答えようもなくて(アイロニーのカギカッコ)」困惑していると、……。
多くの方が、私に代わって応答してくださいました。まず、「自分の性別は性自認派らしく自分で決めろ」或いは、「身体は男に決まっているだろう」と。なるほど、前者は性自認推進派の定義に則ったもの、後者はもし本人申告が正しければ医学的に正しい回答と思えました。この方々に御礼申し上げます。さて、ではこれで一件落着?
基本的にはそうです。しかしこの読者自認の方のnote内容、私を「誤解」している点、或いは「誤解」に立脚した主張などあまりにも典型的なので、その時目に付きましたのだけ少し、指摘しておきます。とはいえ、よくある「誤解」によくある隠蔽、私がそれを解く義務もない類です。だって何回書いたってこの人々は「誤解」したままだもの。ですので今気がついた一部だけ、ABCで。
「誤解」A、笙野は手術済の戸籍変更者の現行法上権利まで否定している。希少な特例者を苛めている。ヘイトの固まり。--それは違います。私は手術済特例戸籍変更者を批判していません。この件においてどんな人間も憎んでいません。今、絶対に止めたいのはむしろ、現行法のGID特例法を無効化して成立する新法、性自認法であり、トムソンロイター通信社や福島瑞穂が言う、性別の自己申告制という方法です。私の敵は海外ニュースで言うセルフID制。手術なし診断なし「メール一本で性別が変えられる」、これですよ。
ともかく性自認という目新しい言葉(これ従来のジェンダーアイデンティティー=性同一性という訳語をリセット目的で、わざわざ意訳した新訳、「新語」です後述)を肯定した状態で、法律の中に入れてはならない。生まれたままの状態で解き放ってはいけない。そもそもこのような個々の主観を法的にそのまま認めてはならない、そういう思いです。
海外では今、女千字文そのままの世界になっている国があります。なお、千字中ただ一つ伏せていた未成年治療の危険性についても、今から私は書こうと思っています。もう反応観測が終わったのでネットでも書けます。
「誤解」B、笙野のようなヘイターに対してでも自分は憎まない、寛容で前向きな対応をする--これ、ふざけるなと言いたい。さんざ「誤解」に立脚した主張をしておいてその結果人を「誤解」漬けにしておいて、こちらからは追求をさせず責任を取らない戦略なのだから。大体私にはこの件で誰かをヘイトする暇などありません。なのに「私を憎むのをやめておく」など、誹謗中傷の上、恩着せがましいね。
私は貴殿らの私への憎悪など怖くはないのです。既にもう年で、マジ老婆心しかなく、例えば「トランス」という曖昧な言葉、その当事者範囲の罠や差別無定義の危険性を懸念しています。
また、憲法が保証する女性の生存権や表現の自由、そして子供の未来や健康を心配するだけです。というと?
トランス「先進国」では未成年の体に手術や治療をして後遺症が残り、そのままの一生を送るかもしれない人々がいるからです。この制度の日本上陸を思うと夜も眠れません。
そもそもそのような犠牲者の少年少女達が最初に経験していた、思春期性別違和というもの、大半は通過儀礼です。当事者の少女に必要なのはただ女性差別の改善、撤廃だけ。一方、ごく一部の治療が必要な子供に対してでも、リスクのある投薬や手術が悲劇を生む可能性はある。そこを考慮して基本的には成人するまで過激な医療は控えるべきです。十分なカウンセリングとスクリーニングが必要。安易な診断による悲劇を防がないと。
「誤解」C、笙野は手術済変更者や女装の善人を性犯罪者と同一視して憎んでいる。--話が逆すぎます。すでにFLJに書いたように今までの制度なら区別が付くのです。しかし性自認という語を含む昨年五月の与野党合同法案が、もし通っていれば、嘘つきに性的少数者を名乗らせ、「法の下の平等」を与えて犯罪を手助けする結果となり、現行法下ではあり得ない侵入合法社会を生む契機になります。中でも襲われるのは小さい子供です。
というか現在の日本では国法なしのまま、既に様々の問題が起こっています。議論や報道さえ何もありません。
なので現在、私は善人を犯罪者と同列にする悪法、希少なはずの人々が急に激増する基準変化、これらの制定に反対しています。制度を憎んで人を憎まず。海外でも、既にこうした制度の見直しか始まっています。
イギリスでは最初手術用件を撤廃した時、法的性別変更者は百倍に増え(ノンバイナリー含)、ブームの中で性転換治療をする女性の数も、ある年など四千パーセント増加しました。今はデトラジションする人々が増え、訴訟も起きています。
この新法は真面目に戸変(戸籍変更)した人々を誤解させ印象を悪化させるし、生活や支援をも圧迫するはず(爆発的な増加で)です。当事者の中にも「女性が可哀相」、「私らが憎まれる」と反対表明し、私達と連帯してくれる人がいます。
表題にある「質屋七回、ワクチン二回」で私はその「仲間」をも書いているのです。
ではちょっとここで、……。
性自認とは何かだけ用語説明、補足します。