集中連載「質屋七回、ワクチン二回」解題とその反響、受難、救い、今後 (中)

(最初から読む場合は“上”)へ

笙野頼子

 この「性自認」という語、既に現行法下で長年の蓄積がある「性同一性(=ジェンダー・アイデンティティー)」という無難な訳語に対し、それを最近、安易に言い換えた新語でございます。つまり「意訳的新訳」です。わざと親しみ易く、まるで深刻な事態でないかのように訳してあり、「あ、自分もそうかも」と危険な治療に向かう子供が増えそうで心配です。さらに仮に法律の中でこの語を肯定的に使うと?

 今まで元の語「性同一性」を使って特例的な戸籍変更者中心の運営をして来たその現場において、それら専門的、経験的、蓄積や慣習や判定までが全て初期化され、白紙状態になる可能性があります。そもそも、元の英語が今海外で暴走していて、異常な使われ方をしている最中であるため、このタイミングで法律に使う用語の日本語訳を更新、再インストールすると、そこから海外の混乱をそのまま直輸入したような、誤解的適用が始まってしまいます。日本はマスコミ、教育、行政が今そうなりつつあります。

 実際、この「性自認」を含む地方条例の該当地域で、警察の捜査に停滞がありました。今までの「性同一性」慣例で対応出来ないのです。なおかつ、……。

 これがもし国法に入ってしまったら、例えば日本でまだ対応出来ていないノンバイナリーなどどいう語(性自認原理主義の主張するジェンダーの一種、男でも女でもない内面を主張)をそのまま議論せず混乱を生む結果となってしまいます。このノンバイナリーも無議論で無規制にしておくと未成年が乳首を失う等悲劇を生むケースもございます。

 しかしそれでもこれらは企業や強者には利益となるので、経団連等か希望してやろうとしています。以上、用語説明終(次、Dへ)。

 「誤解」D、笙野は長年の読者にヘイトをむけている。--いいえ私は読者のお子さんや当事者のためにもなる主張をしているのです。ていうか、最近発生したこの類の読者は、常に私への「誤解」の発生源です。

 まず、この人達は通常読者のように私に向かって、「凄い文章だ」、「ガツンと来た」、「この幻想シーンは事実の凝縮、私小説家の伝統だ」等言わず、逆に「今まで励まされた」とだけ言うのですよでもね。

 文学が女囚強姦の励ましなんかするわけないでしょう。未成年性転換手術※の励まし等も絶対にしない。ところが?

「今まで励まされたのに今は自殺しそうで薬飲んだ」。家への手紙も大体そう。これ愛トリ思い出す。しかもこの方々、……。

 どう見ても私のデビュー三年間の作品と最近四半世紀の作品を読んでいません。或いは目通ししても文字は見てない。特に「性自認」について書いた大量の拙作をまるで読んでくれてません。「残念」です。

 他、この人々は必ず主要装丁者のジャケットに触れるが、これは常に彼女やその会社に嫌がらせをする理由付けになっています。

 「誤解」E、笙野頼子は性器固着の変態老婆--反論謝絶の上で「クイア派」にされています。なるほど小学生くらいで母親からダイアナコンプレックスの「診断」はされているし、自分は生えてくると信じていましたが、しかし私にとって性器というものはうざいだけです。多くはそうでしょう、ほとんどの人にとって、それはうざいし劣等感の産物ではないのですか。そんなもの人に見せたいのはパラフィリアでもごく一部の変な人だけだろう?だがそれでも、……。

 人間は性器を否認してはいけない。あるものはある。ただ人の目には隠しておかないと公序良俗に反します。海外の「トランス差別」女性などは女湯侵入請願派に対し、「見たらトラウマになる」と言い切って断りました。は?女子トイレは衣服の下だから見えないのにだって?メール一本で性別が代わったら、女湯も水泳更衣室も普通の更衣室でも汗かいたらパンツ脱ぐ、そして授乳室はパンツ脱がないけど大変困ります。入って化粧直しする自称女がいます。トイレだって「間違えてドア開けて」する人がいます。「間違えて上から覗く」人物もいます。男性器はそのままで性別を変えた、と称してはいけません。

 「誤解」F、笙野は大家なので誰かがメディアに反論を送ってもタブー視されて載らない。--これなんでこんなに言うのか判らない。過去の業績多すぎ?いえいえ、私なんて文学賞もそこそこしか貰っていない。確かに最後にどーんと野間賞きましたけど、多分あれで打ち止めです。そしてお国の賞や新聞社の賞は持っていません。媒体も次第に干されている。何よりもマスコミとまずいですので(原発、TPP、セルフID、に反対)。

 そして今回のこのnoteの人物のボツ投稿先ってすばるとユリイカでしょ?この人前から別の原稿だって断られているよね?本人呟きだと。その上この該当二媒体、どれも既にインクルーシブ城下町で私とは縁なし。ていうかここ十年以上、何の連絡もない。もともと売れない私、既にボツに最近の中編も加わって六百枚越え。告知にあったように群像にももう書けない(後述)。しかもここの新連載陣をちょっと見てください。Vogueの対談メンバーがほら。それより前にもうひとりが既に。

 さて、このnoteの人、投稿放り投げて結果待つだけなの?それで私が「大家」だから没だって?ていうか、……。

 女千字文の原文が会員限定の媒体でしか公開されてないのになんでわざわざ商業文芸誌に、そんな「問題作」など誰も知らないはずの一般向きのところにいちいち言いにいって?それもしそこで本当に論争するなら一回千字全文引用してからするしかないんじゃないの?しかも事実かどうか以外論争し得ないもの、私は反論か来たら「事実です」って言うしかない。

 或いはなんでもかんでも笙野批判を文壇らしき場所に渡しておけば笙野嫌いな編集者から何らかお仕事貰えるとでも思っているのだろうか。でもそれも「誤解」だね。だって、もし批判が出たら、私に反論書かせるしかなくなるから、それが慣習。

 書き手に名誉毀損してしまった媒体は反論スペース渡して訴訟回避をはかる。でもそれで私が一旦消えたはずのメディアに再登場するとしたらまた商売の迷惑だ。

 いやそれ以前に「反論するんならまずそれが出た場所でやれ、あんたに別に反論権ないだろう、それだったらブログへでも出しておけよ」って、言われて終了。但し、……。

(“下”へ続く)

(性転換手術※ 今は 性適合手術というそうです。)