お元気ですかまたしても、……連載再開プラス

笙野頼子

0) すっかり御無沙汰してしまいました。

 新刊の校了から五月半ばまで、なかなか病が回復しませんでした。そんな中貧乏対策で健康保険の切替えをするなどの用もあって、杖を付いて出ては病を悪化させ、白内障もたちまち進みました。六月の始め、庭で大きな剪定鋏を脇に挟んでいて転倒、その柄で脇の下を突いた結果、第七肋骨を折ってしまいました。当分治りませんが、ともかく刃の方で突かなくて良かったです。しかし一層お待たせするはめになって、……。

 その上このブランクの間に様様な変化が起こりました。

 なので、ご存じ「笙野さんまたトランス差別」、「読んでないけど」の水上文氏(皆さんもう飽きたかな)批判の前に、もっと重要な出来事を(例えば選挙だとか)たくさん述べてから一番最後に、やっと「本題」に入るという段取りになりました。無論、……。

 ひとりの作家を頽廃芸術呼ばわりして殺処分し、文学史から永遠に、不当に葬ろうとする評論家に、当の作家が対抗する事は大切であるけれど。でも既に世界は蘇りつつある。

 これは私より、新しい読者様の方がよくご存じだと思います。でも私の新刊を読んでくれて、やっとスマホからここに辿り着いた、長年の文学読者様には伝えるべき事なので。

(1) 最近の変化、海外女消情勢

 イギリスのボリス・ジョンソン首相がトランス女性は女子スポーツに参加すべきでないと表明しました。国際水泳連盟はトランス女性リア・トーマスを 「差別し排除」しました。国際ラグビー連盟も十三人制の女子ラグビーからトランス女性を「差別し排除」しました。

 なんつかJKローリング氏と同じ意見を述べているTERF首相ですよ?さて、今後海外の「トランス差別やめろ」はこの首相に殴れ殺せ犯せ、と言ってみるのでしょうか?まあそういう脅しはきっと有効なんでしょうね。揺り戻し、あるあるの世界ですし。

 ただ、日本でもこのリア・トーマスについてならば週刊新潮は解禁。

 そんな中それでもまだ何かしら小難しい屁理屈を並べて、それこそ、ピラニアは五匹金魚は百匹同じ池に入れても衆寡敵せずオッケー、なんか意地張っているのは、偉い学者とか弁護士とか左翼政治家と、……有名フェミニスト。でも、……。

 そんなのが新聞報道とか文壇上層部までも支配しているわけで。

 なおかつ、こんな程度の希望的変化だけで、世界はついに中世の闇を抜けた、とまでははなかなか言いがたい。なお、アメリカの女性も女消に強く抵抗はしていますが、結局右からも追われ、脅され続けていて、例えば頼ろうとした保守からも中絶禁止の州法を有効にしてしまう最高裁判決など出てしまい、けして有利な立場とは思えません。だってこの戦いは?

 世界に三百人しかいない富豪達「少数派」に対抗している、ただもう数が多いだけの地球女民インターナショナルという図式ですから。殊に今その中核となっている女たちは?

 そもそも生理中やら妊娠中やら、子宮筋腫持ちやら、おトイレ我慢で膀胱炎再発中やらの、多くは下層労働女性達なのです。しかもこれからも次々と新手がやって来るはずでともかく戦う相手が物凄すぎますよ。でもね、……。

 同志よ!世界中の女同志達よ!

 うちらは民意だよ!民意だで!民意じゃけえ!民意なのどすえっ!

 マルクスが世界同時革命と予想したものと違うところはある。が、近いものもある。ただここまで階級格差が進んできていざという時に、……。

 なんで各国の政党左翼がその富豪の手先になってしまうのか?泣。


(2)へ続く